小児患者の保護者様へ向けて、発熱の基本的な考え方と対応を、成書に則り掲示させて頂きます。また、幼少児期のお子様の”けいれん”は誰にでも起こりうることと考え、あらかじめ対応をご一読されて心の備えをしておくことをお勧めします。

発熱への対応

発熱の理解

41℃を越えるような高体温以外の発熱は生態防御反応(熱を上げて、免疫力を活性化させ、ウイルスや細菌との戦いを有利にする)のひとつです。

熱が高くても活力低下がなく、ものをきょろきょろと見まわしたり、手足をよく動かしたり、遊んだりしているときは急を要する状態ではありません。

観察のポイント

家で様子を見てよい軽症例:

泣き声が強いか普段通り、ぐっすり眠る、皮膚は赤いかピンク色、周囲への関心がある笑う、哺乳力は強い、眼や指手足を動かす、尿がほぼ普段通り出ている。

すぐ受診したほうがよい重症例:

弱々しい泣き声・うめき、うとうとし眠っているのかおきているのかわからない状態が続く、皮膚蒼白・紫色・灰色・色がまだら、外へ連れ出しても周囲への関心を全く示さない、ミルクを殆ど吸わない、目の動きがない、手足がだらりとしている。

発熱時の一般看護

環境を快適かつ清潔にし、病気と戦っている子供がリラックスするようにして下さい。

環境温度

感染に反応し防御反応としての体温のセットポイント(体温調節中枢が、防御反応として必要とする体温)へ達するまでの、ふるえなどの熱産生期は体を温めてあげることが必要ですが、セットポイントに達し皮膚血管の拡張(皮膚紅潮)や発汗などの、体温放散が始まったら涼しくするようにして下さい。熱の上がり際でふるえている時は温め、熱が上がって発汗したら涼しくしてあげる。
夏場や暑い時期の発熱では、常に熱中症を考慮してまずは涼しい環境に移して下さい。

食欲について

発熱すると食欲がなく心配ですが、感染に反応した一連の防御反応として食欲抑制・睡眠誘発が起こるのが普通です。短期間の急性疾患では栄養障害は起こらず、発熱中の無理な食事の強制はむしろマイナスです。発熱により発汗、不感蒸泄(尿、便、汗以外から失われる水分)の増強により舌が乾燥していたり、尿の量が普段の半分以下の時には十分な水分を与えて下さい。熱だけであれば麦茶などでよいのですが、吐いたり下痢が続けば、電解質(ナトリウム、カリウムなど)のロスがあるので、経口電解質液(OS-1など)がよいです。乳児と高齢者は、病態により塩分の保持能力が低下しやすいので、糖分とともに塩分を少し多めにとっていただくといいです。塩味の効いたスープなどを飲めれば一安心です。お口から水分が摂れていれば、点滴の必要性は低いです。

解熱について

解熱剤は医師・薬剤師の指示通りにお使いください。

解熱剤以外の解熱法 解熱剤の補助として、氷枕、氷のうや、額に貼る放熱用貼付薬などの方法は、冷却するには面積が小さく解熱効果は少なく、これらの目的は“気持ちが良い”ということなので、小児が嫌がる場合には行う必要はありません。

解熱剤使用後も熱が高いときの補助としては、ぬるま湯のおしぼりで体を拭いてゆるやかな体温の放散をはかる方法がよいようで、アルコールや冷たい水による体拭きは体温の下降が急速であり、家庭での看護としては勧められません。濡れたタオルを当てて冷やす部位としては、首の付け根や、わきの下、ももの付け根を冷やすと効果的ですが、冷やし過ぎに注意しましょう。

インフルエンザをはじめとする冬場の感染症での発熱と、夏場の感染症時や、熱中症による発熱では対処法が異なりますので、医師の指示に従い対処されることをお勧めします。

けいれん

小児期は人生のうちでも最も痙攣(けいれん)を起こしやすい時期です。特に乳幼児期は中枢神経系の発達過程で痙攣準備状態が最も高い時期といえます。小児期の痙攣を経験する頻度は5-10%に達するといわれています。小児期は痙攣と間違えやすい痙攣類似症状もあるので注意が必要です。

けいれん発作の観察の仕方

けいれんのほとんどは病医院の外で起こり、下記の状況をいかに正確に医師に伝えられるかが重要です。

  • ①意識があったか(呼びかけて応答があるか)
  • ②全身のけいれんか、体の一部分のけいれんか
  • ③一側にけいれんが強かったか否か(左右差があるか)
  • ④眼球(黒目)の位置は、顔色や口唇色は
  • ⑤口のもぐもぐや、舌のくちゃくちゃ、手の無意味な動きなどはなかったか
  • ⑥持続時間は(発作の始まりから落ち着くまでの時間)
    あわてず、あせらず、気づいたときと落ち着いたときに時計を見ましょう(昔は時計、今はスマホ※参照)
  • ⑦発作後の状態は(入眠したか、麻痺や頭痛が残ったか)
  • ※不安で慌ててしまうので難しいかもしれませんが、スマホカメラで動画を撮れると、上記の全て(発作の時間も)が記録されるので有用だと思います(てんかんの診療では夜間の発作を確認するために、ビデオ撮影と脳波モニターが行われています)。

けいれん発作時の処置

  • ①あわてたり恐怖心をもたずに冷静に対応する。スマホの動画をオンにし、以下の処置を行う。
  • ②けがをしないように周囲の危険物を取り除き、安全な場所に寝かせる。
  • ③できるだけ安静にして、たたいたりゆすったりはしない。衣服のボタンやベルトなどがきついときはゆるめる。
  • ④吐きそうな時や分泌物(よだれなど)が多いときは気管への誤嚥(ごえん;誤って入ってしまうこと)防止のために顔を横に向ける。
  • ⑤舌を噛むことはまれであり、口の中にはしやタオルなどを入れることは、歯や歯茎を損傷したり呼吸がしにくくなることもあるので行わない。
  • ⑥熱性けいれんのほとんどは5分以内に自然に止まる。初めての発作の場合は、けいれんが止まった後、かかりつけの小児科または近くの医療機関を受診する。初めての発作が5分以上続く場合は救急車を呼ぶ。
  • ※一度けいれんを起こして受診すると、それ以降の発作時や発熱時の対処法が指示される。

小児のけいれんの原因

  • ①病院退院後1歳頃まで:感染によるものが多い。良性乳児けいれんもこの時期に多い。
  • ②6ケ月から3歳頃まで:一番多いのは熱性けいれん(日本では小児の6〜8%が1回以上の熱性けいれんを経験するといわれている)、泣き入りひきつけもこの時期に多い。
  • ③4歳以後:てんかん(100人に一人発症すると言われています)によるものが多い。

内容については「開業医の外来小児科学 改訂4版」(南山堂)を参考に加筆させていただいております。