インフルエンザに対する経鼻弱毒生ワクチンを2025~2026シーズンに当院でも接種させていただく事にしました。2023年に国内製造承認が下り、2024年秋に国内で初めて供給・接種が開始されたワクチンです。文京区でも今シーズンから助成が始まり2000円程度の自己負担で接種可能な医療機関が増えています。これをご覧になられている保護者の方はフルミストの特徴については十分調べられていると思いますが、私なりの現時点での理解を独酌させて頂きます。なお、個人的な話で申し訳ありませんが、これからの時期は日々の診療に加え、ワクチン接種の患者様、産業医の毎月のパワポ作りに加え、4事業場1000人弱のストレスチェックの集計・解析、東大病院の研修医の先生の受け入れと忙しい時期に入りますので、少しずつ書き加えさせて頂きます。


IgA抗体とIgG抗体の違いについては院長独酌の第二報ご参照ください。
経鼻ワクチンのコンセプトは実はとても古いようです。10世紀の中国では、天然痘患者のかさぶたを粉末にして健康な人の鼻に吹き込む「鼻腔接種」が行われていたとする文献記録が存在したとされ、人痘接種法(variolation)の一種で免疫の原理に基づいた初期の試みとして知られています。鼻腔接種は、かさぶたの毒性を弱めるために、採取したかさぶたを一定期間保管してから使用するなどの工夫がなされ、自然感染での死亡率が20~30%だったのに対し、接種による死亡率は1~2%程度だったとされます。しかし、接種を受けた人が重症化したり、天然痘を広めてしまったりするリスクは残されていたとの言い伝えは、フルミストにもつながるものがありますね。
ワクチンとは異なりますが、点鼻による治療薬は多く存在します。適応外使用となるので勧めませんが、動物実験でも個人的体験でも、ある種の漢方薬は粉を鼻から吸うと著効する場合があります(生薬を煎じながら湯気を吸ったり、散薬を自然に鼻から吸ってしまっている経験がある方が多いのではないでしょうか)。










